■御託と能書き その1「誰かにしずかに」


誰かにしずかに伝えたいことがある。
大声でわめき散らしたいことなんか何もない。誰にともなく、語りかける訳でもなく、ただ自分の考えを整理するようにとつとつと口にしたいことがある。何かの拍子に浮かんだつたない言い回しや、巡りくる季節の移り変わる空のいろや、覚めきらない夢の中で見た追いかけっこの相手の顔を、どうしても言葉にして残しておきたくなるときがある。
そうなのだ、僕らはみんな、他の誰かが見ている夢の中で生きているのかも知れないと、時々僕は本気で思うことがある。寝返りひとつで簡単に崩れてしまいそうな、乾いた砂の世界だ。えんえんと続くこの夢がただの妄想で終わるかどうかは、これからの僕がどんな生き方をするかにかかっている。僕はそう信じて暮らしてゆく。すれ違う夢の中で誰かと分かり合えたとしても、きっと忘れてしまうのだから。
だからこそ、だからこそ僕は、考えることを決して止めないでいようと思う。何が問題だ? 何ができるんだ? 僕はそう問いかけ続ける。例えそこから得たものが形を為さない頭の隅の残滓でも、絶えず考え続けていることが僕に何かを与えてくれると。僕は本気でそう思っている。

050911

Back to About

Back to Home