くろねこ


 降り止まない雨の中で夢を見た。睡眠不足でふらふらになった僕のどこにそんな力が隠されていたのか、長い長い夢を見た。
 僕の夢にはよく猫が出てくる。大抵その猫は夢の中のキーになっていて、例えば僕は知らない街で迷い猫を探したり廃校舎の中で猫の足取りを辿ったりする。それは時に恐ろしげなこともあるし、逆にすかっと晴れた太陽の下で陽気に進むこともある。ただ猫が出てくるというだけだ。
 断っておくと、僕は特に猫が大好きという訳ではない。よく言われる猫派犬派で言うと犬派だし、自分を動物に例えても犬になる。どう間違っても猫にはならない(昔一度だけオコジョと言われたことがあるが)。以前猫を飼っていた訳でもない。そんな僕が、なぜ夢の中でだけ猫と関わるのか未だに不思議でならない。

 一度だけ見た夢と通り過ぎる風景はよく似ている。それは忘れた瞬間になかったものとなり、何かの拍子で思い出したときにだけ鮮やかに甦って、また消えていく。僕がいる風景も誰かのどこかに残っていればいいのだけれど。


050129

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